2011年8月9日火曜日

政府の債権買取りスキームの問題点と「二重債務救済法案」の必要性

1.政府の債権買取りスキーム案の問題点
  ● 政府の債権買取りは、平時の中小企業対策の流用
政府案による債権買取りスキーム(産業復興相談センターと産業復興機構によるスキーム)は、中小企業再生支援協議会や中小企業基盤整備機構が出資するファンドという「平時の中小企業対策」のスキームを流用しているに過ぎない。
  ● 収益前提、中小企業中心のスキームで、買取り規模も全く足りない
しかし、①このファンド(投資事業有限責任組合)は、「投資事業」を目的とする法律によって、最終的に収益を上げることを基本としており、東日本大震災の被災事業者の再生という目的が十分に達成できない、②東日本大震災の被災者の中には、中小事業者だけでなく、農林漁業関係者等も多くいるが、専門性やノウハウに基づく適切な対応が困難、といった問題点があり、そもそも③中小企業基盤整備機構の出資は余剰資金に限定され、買取り規模はわずか15,00億円に過ぎない(政府によれば、東北3県だけで現時点で既に、中小事業者向けの事業性ローンで4,500億円、農林水産関係で3,800億円などが対象として見込まれ、全被災県・原発被害(お茶・牛肉等)県では兆円規模になるが、買取資金を増やす保証はどこにもない。)
  ● 政府は対応可能と言うが、事業仕分けされた組織で実現できる担保がない
こうした指摘に対して、政府は「収益は前提としないで、買い取ることが可能」、「体制を充実し、農林水産業等にも対応可能」、「必要があれば、復興債で財源を確保する」と対応可能なことを強調するが、この中小企業基盤整備機構は、民主党の事業仕分けで事業規模を縮減すべきとされた機関で、いまだにスキームが具体的に動いておらず、できるかどうかの担保が全くない。
● 長期にわたる復興支援に、何ら法的裏付けもなく対応することは、極めて危険。
● 債権買取が法的に規定されないと、役職員に罰則もなく、他の債権者の取り立て防止機能も弱い。

2.「二重債務救済法案」(株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法案)の必要性
  ● 対応の遅い政府でも実現できるよう、法的枠組みを設けて、実効性を担保
東日本大震災による未曽有の被害に対応して、二重債務問題から被災事業者を救済できるよう、法律により、債権買取りの枠組みの実効性を担保
  ● 具体的には、以下のような法律に基づく枠組みで、株式会社として機構を設立
・過去に例のない事態に対し「
被災地域からの産業や人口の流出の防止」を目的         
・回収ではなく、「再生」を前面に立て、「債務負担の軽減」を目的規程
・従来からあるスキームではなく、震災対応のための特別な「
機構」を設立
・支援基準については、農林水産大臣等も、主務大臣として関与
・出資金額は200億円にとどめる一方で、全被災事業者に十分な買取りのための政府保証 
枠を付与(2兆円)
  ● さらに機構の業務について、実効性を確保するため、次のような点に配慮
・政府案とは異なり、事前相談に対応するなど一つの機構で真のワンストップを実現
・県別だけではなく、業態別など自由に支店が設置できるよう対応(機構は株式会社)
・機構設立後は、200人体制を想定し、速やかに買取り業務を開始
・買取り価格に関する基準などを明確化し、一定の債務免除を義務付け