2012年6月29日金曜日

『社会保障と税一体改革』について

6月15日、自民党・公明党・民主党の3党は「社会保障と税一体改革関連法案」について合意し、わが党が求めた修正を行った上で社会保障と税のパッケージとして法案を提出しました。会期末21日までに衆議院で法案を採決・可決する約束でしたが、民主党内の混乱によって日程はずれ込み、26日、賛成多数で衆議院可決いたしました。
少子高齢化が大きく進展するわが国において持続可能な社会保障制度を確立するとともに、世界各国が経済財政危機に直面する中で日本が財政再建と経済成長の両立による再生へ向けて大きな一歩を踏み出すこととなりました。
採決では与党民主党から57名の造反者が出ました。野田総理が最重要法案と位置付ける一体改革でさえ、党内を一本にまとめることができず、もはや民主党政権の政権運営能力の限界は明らかです。



【1】与野党協議に臨むにあたっての基本方針


社会保障と税の与野党協議をスタートするにあたって、わが党は、3つの基本方針もって臨みました。

(1)6月15日までに結論を得て、会期末6月21日までに採決をすること。

(2)社会保障の協議を先行して行い、その合意を得た上で税の合意を得ること。
   あくまで全体のパッケージとしての合意であって、税だけの合意や一部の
   パーツのみで合意はない。

(3)社会保障での合意の前提は、自民党が提案した「社会保障制度改革基本法案
  (骨子)」を受け入れること。


6月8日の与野党協議開始以来、わが党はこの基本方針を堅持しつつ精力的な協議を続けてきました。


【2】社会保障制度は自民党の考え方が全面的に反映


民主党が修正合意の上、受け入れることとなった自民党の「社会保障制度改革推進法案」では、まず、第一の「目的規定」で、この法案は我々の政権時代に策定した「平成21年税制改正附則104条の規定の趣旨を踏まえて持続可能な社会保障制度の確立を図るため、社会保障制度改革について、その基本的な考え方その他の基本となる事項を定める」としており、社会保障制度改革の基本方針は、民主党のマニフェストや本年2月17日に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」ではなく、自民党の考え方がベースになることが明記されています。

●また、第二項の「基本的な考え方」では

自助・共助・公助の適切なバランスに留意し、自立を家族の助け合いなど
   を通じて支援していく

税金や社会保険料を納付する者の立場に立って、負担の増大を抑制しつつ、
   持続可能な制度を実現する

- 国民が広く受益する社会保障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う
   観点などから、社会保障給付に要する公費負担の費用は消費税収を主要な
   財源とする

など、自民党の社会保障政策の基本理念が全面的に反映されたものになっています。

公的年金制度、医療保険制度、介護保険制度については、「社会保険制度
  を基本」とすることを明確にするとともに、各分野で国民の負担の適正化や
  サービスの範囲の適正化など必要な改革の実施を規定しています。
  また、少子化対策では、単に子育てに対する支援にとどまらず、就労、出産、
  育児等の各段階に応じた支援を幅広く行う。待機児童に関する問題を解消
  するための即効性のある施策を推進するといったわが党の考え方がそのまま
  盛り込まれています。
  さらに、生活保護制度の見直しでは不正受給への厳格な対処、生活扶助、
  医療扶助等の給付水準の適正化、就労の促進など、自助を基本としたわが党
  の生活保護制度の見直しの方針を反映したものとなっています。


【3】民主党マニフェストは総崩れ


●今回の三党協議に基づく合意文書及び「社会保障制度改革推進法案」により、
  公的年金制度及び高齢者医療制度にかかる改革については、その内容について、
  三党協議、そして社会保障改革国民会議の議論を経て、必要な法制上の措置を
  講じるとの仕組みが組み込まれました。
  三党協議や国民会議で決定する項目には当然に施策の実施時期も含まれること
  から、民主党のマニフェストに基づく新年金制度の創設や後期高齢者医療
  制度の廃止のための法案をこの通常国会や来年の国会に提出するという方針
  は白紙に戻り、実質上マニフェストの撤回となりました。

●また、「社会保障制度改革推進法案」では、公的年金制度については、「財政
  の現況及び見通し等を踏まえ」、高齢者医療制度については「状況等を踏ま
  え」とされており、自民党の主張通り現行制度をベースに議論が始まること
  になりました。


【4】社会保障・税一体改革関連7法案の主な合意内容


社会保障分野は、民主党との間に大きな隔たりがありましたが、わが党の考え方がほぼ全面的に受け入れられ、法案の見直し、修正が図られました。

<年金関係>

●低所得高齢者等への年金額加算及び高所得者の年金額調整

(1)低所得・低年金者への対応は、年金制度ではなく福祉制度において実施すべ
      きとの自民党の主張に沿って、年金額加算ではなく福祉的な給付措置とし
     て実施することに修正しました。

(2)高所得者の年金額調整については、保険料納付に応じて年金が支給される
      という保険原理を堅持すべきとの自民党の主張に沿って、実施しないこと
     に修正しました。(検討事項に)

●短時間労働者の社会保険適用拡大

自公政権時に提出した法案とほぼ同じ方向ですが、以下の3点についての自民党の提案に沿って修正しました。

(1)適用拡大対象者の標準報酬月額の下限を、7.8万円から8.8万円へ引上
      げることにより対象者の極端な拡大を抑制

(2)消費税引上げ(平成27年10月)の影響を踏まえ、実施時期(平成28年
      4月)の後ろ倒し(平成28年10月施行に)

(3)「施行後3年までに適用範囲をさらに拡大する」との見直し規定を「施行
       後3年以内に検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講じる」に修正
       (注)被用者年金一元化法案は、自公政権時に提出した法案と全く同内容
            (実施時期を除き)。


<子育て関係>

総合こども園は創設せず、自公で進めてきた現行の認定こども園を拡充する。子ども・子育て支援関連の財源については内閣府に一元化する一方、制度の大枠は、給付の仕組みも含めて、幼稚園、保育所、認定こども園の現行制度を維持することに修正。また、自民党の主張に沿って、即効性のある待機児童解消策等を実施することに修正しました。
(注)認定こども園を拡充するために、「認定こども園法改正案」が議員立法で提出され、政府提出の「総合こども園法案」は廃案に。

<税関係>

●消費税の税率及び引上げの時期
わが党が参院選挙等で主張してきた通り、消費税率を5%引上げ10%とすることとし、その時期等については、2014年4月に5%から8%、2015年10月に8%から10%とすることとしました。

●経済への配慮
消費税の引上げに際しては、経済状況を勘案することとし、その判断にあたってはわが党の主張により、法案の景気条項に「成長戦略や事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分するなど、わが国経済の成長に向けた施策を検討する」ことを盛り込みました。

●低所得者への配慮
「簡素な給付」について、政府案には開始時期が明記されていませんでしたが、我々の主張により、8%引上げ段階から実施することを明記しました。
一方、消費税引上げ時に本格的な低所得者対策を実施することとしていますが、わが党が主張している「複数税率」と政府が主張してきた「給付付き税額控除」について並列で検討されることとなりました。

●中小企業事業者への配慮
中小企業事業者にとって適正な消費税の転嫁を行えることが重要であり、政府案にはなかった「円滑かつ適正な転嫁を可能とする必要な立法措置を行う」ことを明記しました。

●消費税以外の税目(所得税及び相続税)の取扱い
政府案にあった所得税の高額所得者への課税強化及び相続税の課税強化については、今後検討し、来年度の税制改正において必要な措置を行うこととなりました。


今後は、参議院において法案審議が進んでいきますが、民主党が先の衆議院選挙で約束したマニフェストの破たんはもはや明らかです。また、あらゆる問題で党内が分裂し、今回の採決においても党内から57名の造反者がでたように、民主党はもはや政党の体を成していません。考え方が異なる政治家は、別の政党に分かれて行動するのが筋であると考えます。
政権交代から2年9ヵ月、素人集団による「何も決められない政治」が続いています。わが党としては、社会保障と税の一体改革法案に一定の結論をつけた上で、早急な解散・総選挙により、「決められる政治、進められる政権」の実現に向け、国民の信を問うことを求めていきます。