2012年6月27日水曜日

谷垣禎一総裁 記者会見【H24.6.26(火)】

社会保障と税の一体改革の関連法案、社会保障制度改革推進法の制定をはじめとしまして、自民党の主張を全面的に反映させる形で修正合意ができまして、衆議院を通過したこと。これは今、「決められる政治」を求められているわけですが、その実現に向けて大きな前進であったと思います。私どもも野党として出来る限りの協力をして、ここに漕ぎつけたということであります。そして今回の三党合意によりまして、最低保障年金をはじめとする民主党のマニフェストは事実上全部反故になってしまった。事実上全部撤回となってしまった、ということであります。
政策面ではそういうことでありますが、他方今回、民主党の党内手続きの混乱によりまして、採決日程も大幅にずれ込んだ。それから、総理が最重要法案と位置付けるこの社会保障と税の一体改革について、民主党を一本にまとめることができなかった。これは極めて大きなことでございます。民主党執行部は、造反者に厳しい処分で臨むべきであります。我々は三党合意を致しました。したがって、参議院でも基本的には協力するということでありますが、その前提はきちっと民主党として体制を立て直す、処分をきちっとするということにございます。それで、このように政策面、それから政権基盤の双方で民主党の政権担当能力の喪失が明らかになって来たということはですね、国民に信を問う必要というものが益々強まっているということを意味しております。今後わが党としては、参院において法案審議を進めた上で、早急に解散総選挙によって国民の信を問うことを求めていきたい、このように考えております。

【質疑応答】
Q:自民党の解散戦略について、参院で法案審議を進めた上で解散を求めるとのことだが、法案成立後の解散ということか。
A:これはですね、一体どのように体制を整えてくるか。要するに野党に協力を求めて来ながら、与党としてはですね、自分の所で色んな人が一緒になっているということで、果たして参議院の審議が終わりまでスムーズに終わるのかどうか。今非常に暗雲に包まれている状況です。その辺りをどうしていくかということがないとですね、なかなか協力もしづらい。ですから今のご質問もですね、「まだ視野が及んでいない」とお答えするしかないですね。

Q:総裁自身は消費増税に熱意をお持ちかと思うが、そういう立場の総裁が参議院の審議を通じて民主党を追い込んでいくというのは、総裁ご自身も法案成立に意欲を持っている以上、構造的に限界があるのではないか。
A:限界があるというのはどういう意味かよく分かりませんが、私どもはこの三党合意という限りにおいては協力するということですけれども、与党になったわけでもありません。連立を結んだわけでも決してありません。我々は当然、与党の問題点を突いていく。これは当然のことであると思います。それを放棄したら、我々は何のために国会に議席を持っているのかもあやふやになりますね。ですから政権担当能力を与党が喪失しているなら、それを指摘して解散に追い込んでいくというのは、私は当然のことであると考えております。

Q:民主党内の処分について、民主党内では造反者に対する処分を軽いもので済ませて良いのではないかという声も出ているようですけれども、この点についてどのようにお考えか。参議院での審議で、自民党として協力しない、あるいは法案に賛成しないという選択肢もあるのか。
A:それはこれからの民主党の出方によりますね。これだけ重要なことについてこれだけ沢山の方が造反をするというようなことでですね、果たして私どもはこの党に協力できるのかどうかという問題があります。ですから私どもはこの参議院での審議に臨むにあたって、与党としてきちっとけじめをつけてくることが必要だと思います。これだけ重要なことでですね、行動が共にできないということであれば、政治家として党を分けて行動するということも、当然のことではないかと私は思っております。

Q:民主党の対応次第では、参議院の審議で協力できない、あるいは法案に賛成しかねるということもあるか。
A:そうです。三党合意に沿って、協力の用意はございます。しかし、けじめのつけ方なり、それからもう一つその関係で申し上げておきたいのは、我々の意向にも反して、選挙制度改革法案を強硬に委員会に下ろすということがございました。こういうこと一つを見てもですね、我々はやはり批判すべきものは当然批判していなければならないし、反対するものは当然反対しなければならない。繰り返し申し上げますが、三党合意を結んで、自民党が与党に入ったかのような理解は全くふざけた理解だと私は思っております。

Q:選挙制度改革法案について、与党が強引に吊るしを下ろしてきたわけだが、自民党の対応として、対案として0増5減の法案を提出する用意はあるか。また選挙制度改革法案の審議について、現時点で応じる考えはあるか。
A:それはやりようによっては当然のことながら、この税と社会保障の一体改革の審議にも関係してくるということは申し上げておかなければならないと思います。無関係ではありません。

Q:衆参で違うが、衆院の選挙制度の審議が参院の一体改革の審議に…。
A:それは党と党との関係で、我々に協力を求めておきながらそういうことをやるなら、我々だって舐められちゃいられないということですよ。当たり前じゃないですか。

Q:0増5減の対案について、現時点では。
A:それはポケットの中に入っていることは入っております。しかし向こうの出方を見ながら我々も臨機応変に対応しておきたいと考えております。

Q:先日、部分的な連立については言及したが、大連立について、現時点ではどのように考えているか。
A:現時点では全く否定的でございます。

Q:今回のような三党合意の枠組みでの政策合意を図ることは、消費税法案以外でもありえるのか。
A:なかなか難しいでしょうね。今のところこの税と社会保障の一体改革についてはこういう合意ができたわけですけれども、全てに亘ってこういうことであるということではありません。

Q:これだけ重要な法案でこれだけの数が造反したとのことだが、57名の造反というのは、執行部が処分を緩めた結果だと見ているか。
A:この他党の中がどうなっているのかというのは、あまり踏み込んだ発言をすべきではないと思っております。私の要求しているのはただ一つ、我々に協力を求めてくるなら、自分の足元を固めて下さい、党を固めて下さい、党がまとまらないのであるならば、はっきりとどなたが協力の相手であり、どなたが協力の相手でないのかをはっきりと示していただきたい。それなくして、協力してくれなどということはおかしなことではないかということを申し上げているのであって、向こうの党での対応の良し悪しというようなことは、私は論ずるつもりはありません。

Q:厳しい処分を求めるとのことだが、分けて行動するのは当然だとの発言もあった。処分の内容について、除名、あるいは離党勧告など、民主党から出ていくように処分をすべきという考えか。
A:これは先程申し上げたことだが、どういう処分をするかということは我々が注文をつけることではないと思っております。ただ我々がいかなる形であれば協力が出来るかということは、自動的に協力をするという話ではないと、そのけじめを、誰が我々と協力する相手で、誰と協力できないのか明確にしない限り、協力ということはできないということを申し上げているのであります。

Q:同じ党の中にいる限りは、誰が協力できる相手で、誰が協力できない相手かということは、はっきりしないという認識か。
A:常識的に言えば、そういうことを申し上げているわけです。

Q:今の民主党の執行部には、処分する能力がないとお考えか。
A:あまり他の党に失礼なことを申し上げるのは私としては気が重い。しかし、今までさんざん我々が苦労をいたしましたのは、私だけではない色々な方が指摘しているわけですが、要するに衆議院で480の内300近い議席を持ちながら、意思決定の仕組みそのものが十分にできていなかったとかですね、あらゆる意味で未成熟であったり、党内をコントロールできていないという状況があちこちにあるわけですね。寄り集めの状態で、民主党がいかなる党であるかというアイデンティティも確立できていなかったことが、今日に及んでいるのだろうと思います。ですから、率直に申し上げれば、どこを直せばと言ったって困るんですよね。色々なところに問題がありすぎだということなんですが、それ以上申し上げると失礼だから、言葉は控えます。

Q:処分について、参議院での法案の審議を始める前に処分を行うべきとお考えか。そういうことが行われない限り、参議院での審議を始めるということ自体に協力しかねるということか。
A:誰と合意を結んで誰が党首なのか、誰が味方で誰が敵なのか分からない状態では、協力しろと言っても難しいですよね。そこはまず、けじめをつけていただくべきだと思います。

Q:民主党内の造反者が57名と言われている。この方々が内閣不信任案に賛同すれば通ると思うが、参院の審議が終わる前に不信任案を提出する考えはあるか。もしくは小沢さんのグループが離党して不信任案を提出した場合、自民党として賛成する考えはあるか。
A:これは先程申し上げたことと関連しますが、私どもは三党合意を結んだという限りにおいて協力をするという用意がある。このことは、我々も責任を負っているわけですね。ただ先程から何回も申し上げておりますように、誰が協力相手か分からないような状況では、物事がスタートしないだろうということはございます。しかし、要するに協力をしたのは三党合意に関してであって、他のことに関しては協力をする義務を負っておりませんし、与党の問題点を徹底的に突いていく必要があるわけですね。政治で解決を求められているのは、決して税と社会保障だけではありません。安全保障の問題であれ、為替の問題であれ、色々な対応を求められていることがあるわけであります。そこで政権担当能力がないということになったら、三党合意をしたからといって、全て協力するというわけにはいきませんね。ですからそこは、我々は臨機応変に、適宜適切に対応するとしか今の段階では申し上げるしかありません。もう一つご質問の中で、もし今、造反をした方達がですね、離党して不信案を出した時はどうするかというお問いかけもあったかと思います。これはまだ離党もされていなければ、今の衆議院の仕組みではですね、独自に不信任案をお出しになることはできませんから、今ただちの問題ではないのだろうと思います。しかし、そういったことについても、全く一般論として申し上げていることですが、我々は決して与党ではない。野党として与党の問題点を追及していく立場にあるのだということを考えれば、「適宜適切に対応する」としかお答えのしようがありません。

Q:自民党の中に欠席をされた方がいるが、処分をする考えはあるか。
A:幹事長の下で、どのような処分をするかを検討していただくことになると思います。

Q:その方からは事前に欠席する旨の連絡が執行部の側にあったのか。
A:文書が届けられたと聞いております。

Q:どのような内容だったのか。
A:賛成できないという内容だったと聞いております。

Q:民主党の小沢元代表が先程、自分を支持する議員との会合で、今の段階で新党はないということをおっしゃったようですけれども、これについてどう思うか。
A:よく理解できないですね。これだけ大事な、基本的なことで違うとおっしゃるならば、今のところ新党はないと、何をおっしゃっておられるのかよく分かりません。小沢さんだって、野田総理の選任に無関係ではないですよね。小沢さんは「野田佳彦」と首班指名でお書きになって臨まれたのではないかと思います。その内閣総理大臣が、政治生命を賭けて「これだけはやりたい」ということに反対されるのであれば、それはそれだけのお覚悟がなければならないのであって、今のところ考えないというのは、何か全くよく分からない対応だと思います。

Q:中川元幹事長が本日欠席されたわけだが、前回の郵政改革法案の処分と同程度、あるいはこの法案の重要性に鑑みて、より厳しい処分をお考えか。
A:幹事長の下で処分を検討していただくということですから、そこで考えていただくということであります。

Q:そこは、総裁のリーダーシップを発揮されるおつもりはないということか。
A:私は石原幹事長、あなたの下で検討してくれと申し上げたわけで、これがリーダーシップでなくて何がリーダーシップですか。

Q:昨日、造反者を処分できなければ参議院で一緒に審議を進めていけるかは疑問とおっしゃった。民主党は参議院で審議する前に処分すべきということだと思うが、中川元幹事長については、参議院での審議前に処分の結論を出すべきとお考えか。
A:石原幹事長にお任せをしております。

Q:法案可決後に野田総理が挨拶回りに来ていたが、総裁からどのような話をして、総理の方からどのような話があったのか。また、可決後に会って、野田総理の表情、印象をどう受け止めたか。
A:私が総理に申し上げたことは、「総理ご苦労様でした。ただこれは、総理にとって大変厳しい結果だったと思います。参議院での審議の前に、きちっと体制を立て直すことを期待いたします」と、私が申し上げました。あとどういう印象かということについて、特に印象はございません。

Q:今日の役員会の中でも党首会談についての話があったようだが、衆院通過後に党首会談をやってはという声もあるようだが、現時点でどのようにお考えか。また総裁はかねてより、政策的なけじめと同時に政治的なけじめも必要だとおっしゃっていたが、今日衆院を通過したわけだが、政治的なけじめについてはどのような整理をしているのか。
A:党首会談について、自分から求める気持ちはありません。けじめについては、政策面も政権担当能力も喪失していることがあきらかになっているわけですから、可及的速やかに解散を求めるのが当然のことだと思います。

Q:党首会談について、野田総理から求めがあった場合、参院の審議に応じる条件などを話し合うために会談に応じる考えはあるか。
A:向こうから求めてくる前に、応じる気持ちがあるなどと言うつもりはありません。私の方から求める気持ちがないというのは、そういうことでございます。