2012年6月16日土曜日

「社会保障制度改革基本法案」(仮称)の骨子を決定

【自助自立を基本に】

■財源の中心は消費税に

自民党は6月7日、社会保障と税の一体改革関連法案のうち社会保障分野の対案となる「社会保障制度改革基本法案」(仮称)の骨子を決定しました。
骨子は自らの生活を本人や家族などの助け合いによって支える自助自立を基本とすることや、制度を支える財源の中心は消費税になるといった基本理念を明記。
公的年金制度については、保険料の納付に応じて年金が支給される現行制度を基本にしつつ、必要な見直しを実施するとしました。
このうち、低年金・無年金対策としては、民主党が掲げる最低保障年金などではなく生活保護の見直しを踏まえた低所得者対策で対応する姿勢を示しています。
少子化対策に関しては、現行の幼稚園と保育所の制度を基本に、地方自治体の裁量権拡大や認定こども園の設置促進、処遇の改善による保育士の確保などで待機児童を解消することを盛り込みました。

■国民会議を創設

また、年金や医療のあり方を審議する「社会保障制度改革国民会議」を創設するとしました。この会議は総理が任命する20人以内の有識者で組織され、社会保障制度改革に必要な法制上の措置について、基本法の施行後1年以内に会議の審議結果を踏まえて実施するとしています。
生活保護についても、不正受給者への厳格な対処、給付水準の適正化、就労の促進などを早急に実施すべきとの考えが盛り込まれました。


【社会保障制度改革基本法案(仮称)骨子】


【一】目的

近年の急速な少子高齢化の進展等による社会保障給付に要する費用の増大及び生産年齢人口の減少に伴い、社会保険料に係る国民の負担が増大するとともに、国及び地方公共団体の財政状況が社会保障制度に係る負担の増大により悪化していること等に鑑み、所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)附則第104条の規定の趣旨を踏まえて安定した財源を確保しつつ受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るため、社会保障制度改革についてその基本的な理念及び方針、国の責務その他の基本となる事項を定めるとともに、社会保障制度改革国民会議を設置すること等により、これを総合的かつ集中的に推進。

【二】基本理念

社会保障制度改革は、平成24年2月17日に閣議において決定された社会保障・税一体改革大綱で示された社会保障改革の基本的考え方等にかかわらず、次に掲げる事項を基本として実施。

1.社会保障の目的である国民の生活の安定等は、自らの生活を自ら又は家族
  相互の助け合いによって支える自助・自立を基本とし、これを相互扶助と
  連帯の精神に基づき助け合う共助によって補完し、その上で自助や共助で
  は対応できない困窮等の状況にある者に対しては公助によって生活を保障
  するという順序により図られるべきであり、社会保障制度改革に当たって
  は、税金や社会保障料を納付する者の立場に立って、負担を抑制しつつ必
  要な社会保障が行われる制度を構築。

2.家族相互の助け合いを通じた自助、自発的な意思に基づく共助等を支援す
  るための措置を講ずることにより、自助及び共助のための環境を整備。

3.社会保障は、社会保障制度を基本とし、社会保障制度に係る国及び地方公
  共団体の負担は、社会保険料に係る国民の負担の適正化等のためのものに
  限定。

4.社会保障制度に係る国及び地方公共団体の負担を支える財源は、社会保障
  は広く国民全体が恩恵を受けるものであること、社会保険料は収入の額に
  比例して徴収されるものが多いこと等に鑑み、消費に広く薄く負担を求め
  る消費税が中心。

5.社会保障における受益と負担の在り方について、両者の関係を明確化して
  国民の理解を得る中で、必要な見直しを実施。

【三】改革の実施及び目標時期

政府は、二の基本理念にのっとり、かつ、四から七までに定める基本方針に基づき、社会保障制度改革を行うものとし、このために必要な法制上の措置については、この法律の施行後1年以内に、八の社会保障制度改革国民会議における審議の結果等を踏まえて実施。

【四】公的年金制度の見直し等

政府は、保険料を納付した者に保険料の納付に応じて年金が支給され、かつ、国民年金と被用者年金が分立する現行の公的年金制度を基本に、次に掲げる措置その他必要な見直しを実施。

1.被用者年金制度の一元化等の措置を講じ、併せて年金記録の管理の不備に
  起因した様々な問題への対処及び社会保障番号制度の早期導入を実施。

2.生活に困窮している高齢者であって公的年金の受給資格を有しないもの等
  については、公的年金制度ではなく、生活保護制度の見直しを踏まえて実
  施する低所得者対策により対応。

【五】医療保険制度の見直し等

政府は、高齢化の進展、高度な医療の普及等による医療費の増大が見込まれる中で、健康保険法、国民健康保険法その他の法律に基づく医療保険制度(以下単に「医療保健制度」という。)に原則として全ての国民が加入する仕組みを維持するとともに、次に掲げる措置その他必要な見直しを実施。

1.健康の維持増進、疾病の予防及び早期発見等のための健康管理を積極的に
  促進するとともに、医療従事者、医療施設等の確保及び有効活用等を図る
  ことにより国民負担の増大を抑制しつつ必要な医療を確保。

2.医療保険制度については、財政基盤の安定化、保険料に係る国民の負担に
  関する公平の確保、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等を図ると
  ともに、高齢者医療制度に関し、現行の制度を基本としつつ必要な見直し
  を実施。

3.医療の在り方については、個人の尊厳が重んぜられ、患者の意思がより尊
  重されるよう必要な見直しを行い、特に人生の最終段階を穏やかに過ごす
  ことができる環境を整備。

【六】介護保険制度の見直し等

政府は、介護保険の保険給付の対象となる保健医療サービス及び福祉サービス(以下「介護サービス」という。)の範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図るとともに、介護保険の保険給付に要する費用に係る国及び地方公共団体の負担割合の引上げ等の必要な措置を講ずることにより、保険料に係る国民の負担の増大を抑制しつつ必要な介護サービスを確保。

【七】少子化対策

政府は、急速な少子高齢化の進展の下で、社会保障制度を持続させていくためには、社会保障制度の基盤を維持するための少子化対策を総合的かつ着実に実施していく必要があることに鑑み、単に子ども及び子どもの保護者に対する支援にとどまらず、就労、結婚、出産、育児等の各段階に応じた支援を幅広く行い、子育てに伴う喜びを実感できる社会を実現するため、次に掲げる措置その他の必要な措置を実施。

1.現行の幼稚園、保育所等の制度を基本としつつ、その区域内に待機児童
 (保育所における保育を行うことの申込みを行った保護者の当該申込みに係
  る児童であって保育所における保育が行われていないものをいう。以下同
  じ。)が多数存在する地方公共団体の長の裁量権を臨時的かつ特例的に拡
  大するとともに、認定こども園(就学前の子どもに関する教育、保育等の
  総合的な提供の推進に関する法律第7条第1項に規定する認定こども園を
  いう。)の設置の促進、処遇の改善等による保育士の確保、必要な財政上
  の支援等の措置を講ずることにより、待機児童に関する問題を解消するた
  めの即効性のある施策を推進。

2.1歳未満の子どもに保護者が寄り添う育児を促進するため、育児休業等の
  取得の促進、1歳以上の子どもの保育所への円滑な入所等を確保。

【八】社会保障制度改革国民会議

1.二の基本理念にのっとり、かつ、四から七までに定める基本方針に基づき
  社会保障制度改革を行うために必要な事項を審議するため、内閣に、社会
  保障制度改革国民会議(以下「国民会議」という。)を設置。

2.国民会議は、委員20人以内で組織し、委員は、優れた識見を有する者の
  うちから、内閣総理大臣が任命。

【九】その他

1.施行期日

この法律は、公布の日から施行。

2.生活保護制度の見直し
政府は、生活保護制度に関し、次に掲げる措置その他必要な見直しを実施。

(1)不正な手段により保護を受けた者等への厳格な対処、生活扶助、医療扶
   助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促
   進その他の必要な見直しを早急に実施。

(2)保護を受けている世帯に属する子どもが成人になった後に再び保護を受
   けることを余儀なくされることを防止するための支援の拡充を図るとと
   もに、生活保護制度を就労が困難な者に関する制度と就労が困難でない
   者に関する制度においては、正当な理由なく就労しない場合に給付を減
   額し又は停止する仕組みの導入等を検討。